講演会報告:JICA中南米2所長(江口 雅之ブラジル事務所長、篠 克彦ホンジュラス事務所長)講演会:2024年4月16日 10:00~11:30am (日本時間) | 【検証用】一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告:JICA中南米2所長(江口 雅之ブラジル事務所長、篠 克彦ホンジュラス事務所長)講演会:2024年4月16日 10:00~11:30am (日本時間)


【演題】JICA2所長報告会:ブラジル事務所長、ホンジュラス事務所長
    コロナ禍からG20に至るブラジルでの3年間を振り返る
    ~ホンジュラスは何処へ行くのか。JICAに何ができるのか。~
【講師】江口 雅之氏 JICAブラジル事務所 所長
    篠 克彦氏 JICAホンジュラス事務所 所長
【日時】2024年4月16日 10:00~11:30am (日本時間)
【場所】オンライン
【参加者】67名

両所長は、別途当協会ホームページに掲載する資料に基づいて、メディアで知ることの出来ない現地情報およびJICAの活動について話された。

ロナ禍からG20に至るブラジルでの3年間を振り返る
江口所長は2021年1月に着任され、今年3月に帰任されたばかりで、以下の項目に添って熱意をもって話された。

1.COVIC-19禍のJICA協力
ブラジルがコロナ感染者累計世界第3位、死者累計数世界第2位という中で、専門家派遣中止や協力隊引き揚げ等を行う。
中国をはじめ、ワクチン供給は早かった。日本は日系医療機関、保健医療研究機関を通しての協力、資金協力、民間との連携支援等を行う。

2.ブラジル政権移行とJICA協力(主に保健、防災、環境保全への協力)
いずれの分野の協力も政権交代による省庁再編等の影響を受ける。

3.日系社会とJICA協力
日系人数は270万人、6世までいる。国籍はブラジル人、人種は日本人。
ブラジルでの日系人のイメージと日本におけるイメージの間にギャップがあるので、そのギャップを埋めたい。日系を対象とする様々な支援プロジェクトのに加えて、「アジア系ブラジル人(日本、中国、韓国)」を対象とする新たな試みが始まる。
若手のコロニア社会離れ、日本的伝統の喪失、非都市部での「限界集落」化、といった課題への取組み。

4.日本が選ばれるためには
日本人に対する良いイメージを所与とせず、維持・強化する努力が必要。
ブラジルの等方位外交に対する日本の価値観外交。影響を保持し続ける努力が必要。
実益重視。調査だけでなく、実行が重要(中国の存在)。

~ホンジュラスは何処へ行くのか。JICAに何ができるのか。~

篠所長の講演は以下の項目に添って行われた。

1.ホンジュラス概要(一人当りGNIは2,750ドルで中南米では下から3番目)

2.現シオマラ・カストロ政権の政策、方向性
初の女性大統領。連立政権(内部崩壊している)
民主社会主義国家を目指す。
台湾と断交し、中国と国交樹立(2023年3月)。
汚職対策:汚職・無処罰問題対策委員会(CICIH)設置。
外資の自由度を制限する方向(雇用経済開発特区(ZEDEs)の廃止)。
Ley de Justicia Fiscalを巡り、経済界と対立。
大洋間鉄道建設国家委員会(CONACOFI)の設立。

3.その他のホンジュラス政府の動向
ハリケーン被害。
治安は良くなっている(殺人件数減少)。
移民からの送金額増加。若者の約半数が移民を考えているという調査。
政党間のせめぎ合い。「法の支配」指数は142カ国中119位。
ホンジュラス人は人がよく、人にやさしいが、自分にも甘い。

4.JICAの対ホンジュラス協力方針
中央省庁への技術移転はハシゴをはずされることがある。JICAは、地方活性化施策を中核とした持続的な社会経済開発への支援、を行う。

5.JICAの事業展開、各事業に込めた想い
運輸交通:ハリケーン被害の修復、中米広域の物流・ロジスティックスM/P策定、ドライキャナル構想への支援。
地方開発:2006年から住民参加型の行政事業計画策定手法を導入し、成果を挙げた。現在、そのモニタリングおよび評価手法を整備中。2015年より金融包摂支援。
警察協力・治安対策:2009年からの地域警察活動支援が成果を挙げ、JICAが勲章を授与された。
保健・医療:技協、無償協力を通してのシャーガス病対策、母子保健向上。非感染性疾患対策。来年から救急病院建設事業を開始。
算数教育:2003年からのJICAの看板協力。
洪水・斜面災害対策:斜面対策としてのマスタープラン作り。ハザード分析評価、構造・非構造対策等包括的支援。洪水対策としてのマスタープラン策定。意見交換による下地作り。
上水道整備:様々なスキーム(無償、借款、技協)の活用。
廃棄物管理:自治体連合単位での解決を提案。
再生可能エネルギー:過去に導入した水力発電タービンの更新を日本企業との連携で。

なお、講演後の質疑応答では時間の制約があったが、ブラジルでの再生可能エネルギーの状況と売電について、EV産業の推進および通商政策について、の2つの質問に答えていただいた。

<会員限定:資料・録画>
講演会資料: JICA中南米2所長(江口 雅之ブラジル事務所長、篠 克彦ホンジュラス事務所長)