【季刊誌サンプル】中国から見るラテンアメリカ 小山 雅久(日中関係学会 理事) | 【検証用】一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】中国から見るラテンアメリカ 小山 雅久(日中関係学会 理事)


中国から見るラテンアメリカ

小山 雅久(日中関係学会 理事)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2022年秋号 (No.1440)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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中国から見るラテンアメリカ 小山 雅久(日中関係学会 理事)

今年(2022年)6月に米国ロサンゼルスで米州首脳会議(米州サミット)が開催されたが、米国からデカップリングで追いやられる中国がこれにどのような報道をしているかに注目した。

果たして、6月15日付の『人民日報』には、一部のラテンアメリカ諸国は米国がキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを招請しなかったことを批判して参加を取りやめたこと、国際世論も米国のやり方はサミットの分裂、覇権、差別という目的が露わになったこと、もはやサミットの成果は乏しく、改めて米国のAmericaFirst(米国第一主義)が明らかになったことなどを論評、またロイター通信が35か国中、指導者は3分の1が欠席、発足後参加が最も少ないサミットになったと報じたことを引用するなど、米国とラテンアメリカの関係変化を伝えた。

日本の対中関係は昨今の米中対抗関係を背景にした経済安全保障促進法やインド太平洋経済枠組み(IPEF)に見られるような中国抑止の論調で覆われているが、その裏でグローバル経済の恩恵を受けてめざましく成長してきた中国がラテンアメリカをどう語っているかをうかがい知ることは興味深い。

本論考では中国のグローバル化を「脅威」という言葉で終わらせず、日本とラテンアメリカの今後の関係を展望するうえで、特に国家の経済安全保障の観点から冷静にその動きを受け止め、日本のあるべき立ち位置について考察したい。

現在の中国の対ラテンアメリカ交流

日頃おもしろく感じる点をご披露すると、中国の官制メディアである人民日報や新華社が日々発信する国際関連情報は米国・欧州はさておき、南米やアフリカに関する報道が近隣国である日本や韓国よりも多いことである。官制メディアは主に自国民向けの報道ツールではあるが、リオデジャネイロの発信拠点を中心にブラジルとその周辺国における地元の経済情勢や現地で活動する中国企業などがよく紹介されている。最近では、太陽光、風力などの再生エネルギーや電気自動車(EV)、農業関連の紹介が多い。

上海大学のラテンアメリカ研究センターの江時学(JiangShixue)主任のレポート1の要旨は以下の通り。

「中国は1978年の改革開放政策に転換以降は従来のイディオロギーの壁を超えた外交関係を展開、中国の対外直接投資先としては今やアジアに次ぐ規模にまで成長、特に習近平政権の時代に入ってからは『中国の特色ある大国外交』方針により、いわゆる『一帯一路』構想の延長線上にある。広大で潜在的な市場、豊富な資源は中国にとっても無視できない地域であるが、モンロー主義を信奉する米国が警戒していることを認識しつつも、米国に理解を求める努力が必要であり、むしろ米国企業との連携を進めるべきである。」

本誌夏号に寄稿された片山和之駐ペルー大使は、元在上海総領事、在中国大使館公使などを歴任された外務省きっての中国通だが、ラテンアメリカと中国は一定の距離感や違和感をともなった実利的関係にあり、一義的には経済的利益、他方、それに留まらず外交・政治的観点を含めた戦略的意義を有していると説かれている。

7月1日のラテンアメリカ協会ラテンアメリカ・カリブ研究所講演会で上智大学の岸川毅教授が『中国語文献にみる中国、台湾、ラテンアメリカ関係』について講演された。そこでご紹介のあった『ラ米黄書:ラテンアメリカ・カリブ発展報(YellowbookofLatinAmericaandCaribbean)』(北京社会科学文献出版社)2を筆者もさっそく入手し紐解いてみたが、ラテンアメリカ全体の政治、経済、社会、対外関係の章の次に米国のラテンアメリカとの関係、なかんずくバイデン政権の対ラテンアメリカ政策、ブラジルと米国の関係を挙げている点は興味深い。国別の章では、ブラジルを筆頭にメキシコ、アルゼンチン、キューバ、ベネズエラ、チリの順に報告されている。

また、バイデン政権の対ラテンアメリカ外交政策は西半球のイニシアチブ再構築の一環で新たな調整時期にあるが、国内政治との兼ね合いからもまだしばらくは不安定で過渡期の段階にあると分析している。優先注力先としてはメキシコ、コロンビア、ブラジルを並べている。ラテンアメリカと中国との関係は最近始まったこ